避難所の入退管理には登録票や入所届などの伝票を使います。
これが紙媒体であることが一般的、徐々に電子化を進めている自治体も増えて来てはいますが、まだまだ途上です。
その課題は何なのか、検討してみました。
設問が不均一
全国の自治体が避難所入所の管理をするにも関わらず、その様式(フォーマット)が統一されていないことは現状です。ここを変えることは総務省などの号令が無ければ難しいと思います。
今回、いくつかの自治体の避難者入所届や登録票などを調査してみましたが『避難所に必要?』と思う項目が多いなと思いました。
自治体らしい点で言うと『世帯主』という考え方を持ち込んでいる点は共通しています。
必要ですか?
避難所入所届(登録票)に『必要ですか?』というものをいくつか検討してみます。
【参考】鶴岡市避難所開設・運営マニュアル
【参考】福山市避難所運営(長期間)マニュアルについて
【参考】福山市:福山市の統計
【参考】福山市:外国人相談窓口(がいこくじん そうだん まどぐち)に ついて
個人情報・生年月日
避難所に入所するために氏名などを登録することは理解できますが、他の情報は要るのかどうか、考えたいと思います。
生年月日を登録する自治体が大半ですが、避難する人の生年月日が必要かと考えると、必要なシーンは無いかなと思います。
『何歳か?』ということは活用する場面があるかもしれませんが、30歳と31歳の違いが必要な場面は無いと思います。
税を使っての避難所運営ゆえに、市民以外は入所させないということであれば住民票との照合も必要になるかと思いますが、そのような事は行われていません。
安否確認として『安』の人のリストを作るという面での生年月日の重要性はあるかもしれませんが、その目的で生年月日を収集しているとは明かされていないので、生年月日は必要ないかなと思います。
このような背景から、AmpiTaで試作した入所届の電子化フォームでは『年代』だけ入力するようにしてみました。
住所・住居
住所についても要検討課題だと思います。
どの家の人が避難してきているかをリストするという事には使えますが、そうするためには地図と住所リストの照合が必要になるので、現状でどこまで活用されているかというと、怪しいところです。
住居の被災状況についても入所届に記載すべきであるかどうかは難しいところです。
自己申告であるので『あの人はうそをついている』などと言ってくる自治会長が居るかもしれません。
そもそも避難所に入所するためには、自宅が損壊していなければならないということはなく、身の安全のために、身を寄せる場として使うのが避難所であるため、自宅の損壊具合は重要ではありません。
避難者がピークになる時期には、自宅の損壊有無は関係ないと考えられますが、長期的には避難所の目的を逸脱して利用する人が居ないように、調査が必要かもしれません。その調査は避難所に長く居る人に対して実施すれば良いので、多忙なピーク時には必要ないかなと思います。
障害・アレルギー等が不安定要素
入所届に障害やアレルギーを記入するということは、ほぼすべての自治体で実施されているのではないかと思います。
ここの項目を細かく見るべきか、漠然とするべきかについては自治体の考えが分かれるところです。
『障害』と言っても、障害者手帳を交付されるような障害もあれば、生活に支障があるという程度の障害もあります。
極端に言えば『近視』というのも平時では障害にならないとしても災害でメガネを失ってしまった人は歩行に難があるほどに近視の人が居るかもしれません。
障害者手帳を交付されていても、特に配慮して貰わなくても良いという人も居るかもしれません。
例えばペースメーカを埋め込んでいる人にとって、数日間の避難所生活であれば配慮は必要ないと思っている人が居るかもしれません。
今回試作した登録フォームでは『障害』という言葉は使わず『介護・介助・援護』という表現にしてみました。
これにより、被災してケガした人なども入力しやすくなるかなと思いました。
アレルギーについては、本人の申告も重要ですが、本人に自衛してもらうことも重要になります。
避難所の管理者がアレルギーについて詳しいとは限らないので、細かなアレルギーについて記載する必要性はないと思います。
入所者の中にアレルギー持ちが居ることを前提とした管理が必要になると思います。例えば『この食事の成分はここに掲示しておきます』といった声掛けが重要であると思います。
【参考】厚生労働省:『身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について』の一部改正について(平成26年1月21日)
AmpiTaの避難所応用
避難所の入口で入所届を書くのに必要な時間は2~3分だと思います。
半分くらいは書きなれた氏名や住所ですが、残る半分は自宅の損壊やアレルギーなど書き慣れないことが続くので、時間がかかるかもしれません。
今回試作したAmpiTaの登録フォームでは、約1分間で入力できましたが、入力に手間取る人も居ると思いますし、回答内容を思い浮かべるのに時間がかかる人も居ると思います。
入力者がどうかということよりも、Excelなどに転記する手間がゼロに近くなる価値は大きいと思います。
入所届にある50~100項目ある入力内容、1項目1秒でも1~2分かかり、500人避難していたら500回の入力が必要になります。
500人も入力するのは非常に手間ですし、集中力も続かないと思います。
阪神淡路大震災は早朝の5時台、東日本大震災は午後2時台の発災でした。
そこから6時間以内に避難所の入所ピークがあるとすると、阪神淡路大震災であれば昼12時頃、東日本大震災であれば夜20時頃にピークが来ます。
その時間から500人分を入力した場合、その日のうちに入力して市役所へ報告するというのは非現実的だと思います。
AmpiTaで登録してもらうようになれば、この一覧表にする作業が自動化されれば、相当な労力の軽減になると思います。
500人分で500分として約8時間、平時の1人分の労働時間に相当します。
市職員が他の仕事を差し置いて入力するとは思えないので、自動化されることで現場を回す仕事に集中できると思います。
避難所対応力向上に期待
先述のとおり、手入力であれば何時間もかかった作業が、AmpiTaを使ってウェブ登録することで、数時間がゼロ秒になるかもしれないポテンシャルがあります。
この時短により期待されることは、避難所の管理者の時間をつくることです。
市職員が配置されると思いますが、彼らが本来すべき仕事をする時間を作り、人間なので疲労もあるため休憩時間も確保し、もっと言えば市職員が帰宅して家族に会う時間も作ってあげられるくらいに余裕が生まれると良いなと思います。
現状では全員にスマホ入力を要請することはできませんが、いずれ避難所にタブレットなどが配備され、Wi-Fiも用意されるようになれば、全員がウェブ入力ということもあり得ると思います。
現に、小中学校では全児童・生徒にタブレットが配られているので、校内には情報端末がたくさんあると思います。Wi-Fiも整備されているのでウェブ化はハード面の課題は無くなっていると思います。それを避難所用に使うためのソフト面の課題はあると思いますが。
AmpiTaであれば月額換算千円程度、さほど費用もかからずできると思いますので、避難所運営のスマート化に、安否確認システムの応用をご検討頂ければと思います。
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